【産地訪問レポート】いちご農家 古田さん
長野県阿南町
いちご畑①
8月のある日。
南信州の玄関口、飯田市から車で走ること40分。
うねうねと山道を登り、到着したのは長野県阿南町新野。
標高800mに位置するこの土地ならではの果物があります。それは「サマープリンセス」。
“夏の王女”の称号を持つそれは、夏でも収穫できるいちごの品種の一つです。長野県オリジナルブランドで、生産は長野県内に限られています。
その上、夏でも冷涼な標高の高い土地でしか栽培できないため、生産者は十数件ほど。そのため県内で収穫されるいちごのうち、この品種が占めるのはほんの数%に過ぎません。
そんな稀少ないちごを栽培している数少ない農家の内の一軒、古田さんのもとを訪れました。
サマープリンセスの栽培を始めたのは3年前。
「冬から春にかけて作るいちごとはまた違いますね。」 病気になったら進行が早い、流通の過程で傷みやすいなど、夏採りいちごならではの問題を解決するため、毎日が研究と試行錯誤だったといいます。それでも栽培を続けてきた理由とは何だったのでしょうか。
「一年中いちごを欲しい人がいるので、一年中いちごを出荷できるようにしたかった。」とてもシンプルな答えでした。
通常のいちごの出荷時期は12月から5月。
サマープリンセスの出荷可能時期は6月から11月。
文字通り「一年中」、生のいちごを流通させることが可能なのです。

ハウスの中に足を一歩踏み入れると、見慣れた赤い実がそこかしこに実り、今が夏であることを忘れるほどに甘い香りが立ち込めていました。
いちご畑②


食べてみてください、と差し出されたいちごを一つ恐る恐る食べてみました。なぜ、恐る恐る、なのかというと、事前にネットで知らべた情報で「この品種は酸味が強く…」という記述を目にしたため。内心では、すっぱいいちごは食べたくないなぁという気分でいたからです。
気合を入れて、いざ実食。
いちご畑③
おいしい。
確かに酸味は強いかもしれませんが、言われてみればそうかも、という程度。むしろ、適度な酸味は味わいを爽やかにし、夏に食べるにはちょうど良いかもしれないとも感じます。また夏いちごの需要の大半はケーキ等に使用する洋菓子店だそう。スイーツに 使われるなら、なおさらこの甘ずっぱさが活きてくるでしょう。そんなことを考えながら、結局3つくらいぱくぱくっといただきました。
このサマープリンセスは、近年栽培方法の研究も進んで品質の良さが評判となり、洋菓子店のような業務用だけでなく、デパートに並ぶことも多くなってきたそう。
ほしい人がいるから、作る。作るから技術が高くなり、品質も向上する。さらにほしい人が増える。
一粒のいちごから、ものづくりの本質を垣間見たように思いました。
 
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